小話です。
扱う商品は入社した時以来、コスメティック一筋。
今では大きなデスクトップ仮想化を丸ごと任されたり、原稿を書いたりすることもしょっちゅうだ。
私がその雑誌を買うことはほとんどないが、美容院や医者の待合室で手にとって真っ先に見るのはマリーのページ。
そこには本人のイメージとはかけ離れた、時に夢々しい、時に思い切りファッショナブルな世界があって、毎度のことながら私は驚くのです。
しかしそれにしても、あの展覧会場の奥の部屋で控えめに座っていたマリーは、まるで自分がこの場の主役であることをすっかり忘れてしまっているようであった。
客たちの様子は、いわゆる展覧会場一般における客層というよりは、やはり彼女の所属するマスコ、ミ業界という世界と、そして彼女がそこからやってきた世界、にもかかわらずそこから「落ちこぼれた」世界、すなわちブルジョワの世界とを混ぜ合わせた感じであった。
彼らは概してきれいな身なりをしており、表街道を歩くものの自信と朗らかさがその顔にはあった。
そんな中にあって、主役のマリーは一人、不安そうに、ぎこちなく奥の部屋の肱掛椅子に座っていました。
分厚いコットンのダンガリーシャツを羽織り、その日は口紅を少しつけていました。
その場では軽く挨拶を交わすにとどめ、そして数日後、電話で彼女が指定してきた待ち合わせ場所が、クリヨンのバーだったのです。